人事制度の見直すべきポイント

人事制度の見直すべきポイント

1.人事制度とは

 

人事制度は、広義では従業員の処遇に関する制度全般を言いますが、狭義では「等級・役職制度」「評価制度」「報酬制度」等の人事管理に絞り込んだ制度について言います。こちらのコラムでは、狭義の意味の人事制度の見直しについて解説をしていきます。

2.人事制度の基本要素とは

 

人事制度は、「等級・役職制度」「評価制度」「報酬制度」から成り立ちます。人事制度の目的は、この3つの制度を元に、従業員の社内の位置づけを設定し、適性な評価を実施、処遇を与えることで、人事管理を効率化し、人材を育成し、従業員のモチベーションを高めることにあります。
とくに、社会やビジネスにとって未来の予測をすることが難しくなった現代では、こまめな人事制度の見直しが求められます。

 2-1.等級・役職制度

等級・役職・資格等によって社内での位置づけを決める制度のことをさします。この制度に基づいて、報酬等を決定していきます。
▼等級・役職例

 2-2.評価制度

従業員のマインド・能力・知識・成果に基づいて評価をする仕組みのことをさします。この制度に基づいて査定を行い、等級・役職の昇降級や賞与・月給等の報酬への反映を行います。
▼評価制度例


2-3.報酬制度

等級・役職制度と評価制度に基づいて、従業員の月給、賞与、退職金等を決める仕組みのことをさします。

▼報酬体系の例

3.人事制度構築の全体像

 

 3-1.経営方針・事業戦略との連動

人事制度の見直しにあたっては、制度の修正「のみ」をするだけでは、問題の解決につながりません。会社の定める経営理念や事業戦略に基づいて制度の修正を進めていく必要があります。そもそも、人事制度の見直しを進める理由は「事業戦略」を進めるうえでヒトに関する問題がボトルネックになるためです。下記の図のように、経営理念→事業戦略→人事戦略を連動させていくことが重要です。これは運用も同様であり、「経営理念を社内に浸透させる」「経営戦略を展開させる」という意識を持って運用を進めていきます。

 3-2.人材開発Tの整備

また、抜本的に制度変革を進めていく上では、今までの「人事部」とはことなる「人材開発部」を組織化していきます。ただでさえ、人事部には毎年一定時期に必ず行わなければいけない業務が多くあります。今すでに存在している人事部に対して業務を付加するのではなく、人事評価制度見直しを進めるのであれば「人事・教育チーム」を、採用を積極的に進めるのであれば「採用チーム」を発足させることで円滑な制度設計を促すことが必要となります。この人材開発本部に求められる指標としては「採用数・定着率・生産性・昇進率」等が挙げられるでしょう。

4.人事制度改革の7つのステップ

実際に、人事制度を改革する段階に至りましたら、以下の7つのステップによって進めていくのが良いでしょう。

 

 4-1.キャリアステップの作成

キャリアステップの作成を「コース別雇用管理」や「複線型人事制度」の構築とも言います。職務内容の違いや転勤の有無、従業員の適性や志向によって複数のキャリアステップを用意していきます。ここでは、キャリアステップの一例を挙げます。

例えば、我々が人事制度に関してお手伝いをさせていただいているA社では上記の図のように「スペシャリストコース」と「マネジメントコース」の二つのキャリアステップを用意しています。前者はスペシャリストとして自らのスキルを磨くコースであり、後者は管理職としてマネジメント力を磨くコースです。以前までは、昇格すると自動的に部下を持ち、マネジメントをしていく必要がありました。しかしながらマネジメントに適性が無かったり、苦手意識をもっていたりなどで、部下の育成が進まない、といったことが多発していました
。そこで、このようにコースを分けることで、社員はスペシャリストとして自らのスキルを磨き続けることが可能となり、より多様な人財が輝けるような土壌を築くことが出来ています。

 4-2.役職・等級基準の作成

役職・等級制度は、等級・役職・資格等によって社内での位置づけを決める制度のことをさします。この制度に関しても様々な設定方法がありますが、構成例をご説明いたします。
まず、見直しにあたって、現状の等級・役職・資格等を下記のように整理していきます。整理が難しい場合には、社内で「1人前」と言われるための要件をまとめていきます。これを「職能要件書」や「職務記述書」ということもあります。

こちらは、職種別、コース別に要件をまとめていく必要があります。

また、各等級基準、役職基準が決定しましたら、その連動方法についても決定していきます。

例えば上記の画像では、等級と役職が完全連動する形ではなく、ある程度の幅を持たせて連動するような設計になっています。

4-3.職種別目標・KGI/KPIの設定

等級・役職制度設計後は評価制度の設計をしていきます。評価制度の設計にあたって、各職種のKGI/KPIを設定します。KGI/KPIの各テーマを管理会計の科目分類に連鎖するように設計し、それによって、各職種について評価項目を定量化することが可能となります。

 4-4.評価項目の作成

KGI/KPI設計後、各評価項目を作成します。
最終的に成果(KGI)につながるようにKPI、KPIにつながるように知識・技術の項目、さらにそれらを支えるようなマインド項目を設計します。管理職については、部下育成や方針を徹底させるためのマネジメント項目を設計します。

 4-5.手当・処遇ルールの策定

等級・役職制度及び評価制度を設計後、手当・処遇ルールを策定します。
こちらについても様々な設定方法がありますが、基本的な賃金体系の例としては以下が挙げられます。

また、基本給の設定で最もオーソドックスな制度は等級号俸制です。
下記の図をご覧ください。下記では、横軸に等級を縦軸に号俸を設定し、賃金テーブルを作成しています。等級は、4-2で記述した要件に従って設定をします。

号俸は評価制度の要件にしたがって設定をします。例えば、以下の表のように評価制度の点数結果によってランクをつけ、そのランクにしたがって、号俸の昇降級幅を設定することで処遇を決定しています。

 

 4-6.賃金シミュレーションの実施

等級・役職制度、評価制度、報酬制度の設計が完了しましたら、最後に賃金シミュレーションを実施します。賃金シミュレーションでは、人事戦略の実行によってどれくらいの人件費が発生するか、社員のキャリアアップにしたがって各従業員はそれくらいの給与を得られるか等をシミュレーションしていきます。

 

 4ー7.社員説明会の実施

大まかな制度設計に関しては以上の通りですが、策定した人事制度を風化させないためにも、従業員への制度理解を進めていくことが肝要です。定期的に社員説明会を実施し、従業員の不明点に出来る限り応えていくことで、制度に関する不満などが極力起きないように運営をしていきます。評価制度をスタートする前に必ず社員に制度を説明してください。評価制度を作る過程に関わっている社員や経営者自身は作る過程で制度に対しての理解度が増しますが、それ以外の社員は初めて知ること、聞くことばかりです。当然1回ですべてを理解することは難しいですので回数を重ねることが重要です。
できれば下記のプロセスで説明して下さい。
①評価者向けに説明
②評価者含め全社員に説明
③役職別や職種別に説明(できれば1回当たり10人未満で)
④評価を実施して評価者からのフィードバックで制度についても説明

 

5.さいごに

最後までお読みいただきましてありがとうございました。ここまで色々な情報をお伝えしてきましたが、全てが自社にマッチするわけではありません。企業の特徴や状況によって必要なことが変わってくるのです。
ぜひ評価制度の導入をご検討の方は自社に何かマッチするのか、何を取り入れたら良いのかを検討してみてください。
もし悩まれたことがありましたら、いつでもご質問をお受けいたしますのでご相談ください。

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