経営者目線の社員の育て方

経営者目線の社員の育て方

評価制度から考える働き方改革

時代は「顧客満足(CS)」から「従業員満足(ES)」へ

「ブラック企業」、「スーパーフライデー」
そんな言葉が世間の注目を集める時代。
キーワードは「顧客満足(CS)」から「従業員満足(ES)」に移り変わっています。

船井総研でも、昨年度から数百社を超える企業で従業員の満足度の診断を行っています。
診断の項目は9つの大項目に分けられます。

①会社の理念ビジョンへの共感
②仕事への誇りステイタス
③自身の将来像
④社員と社員の関係性が良好
⑤上司への信用・信頼
⑥働きやすい環境
⑦衛生的な環境
⑧報酬/評価
⑨企業ビジョンと合致した採用活動

いわゆる、働きがいのある会社では、「総合的にみて、この会社で働けていることに満足している」と回答する社員がおおよそ75%以上を占めています。

しかし、項目別に見てみると、「③自分自身の将来像」、「⑧報酬/評価」の項目が40%を下回っています。
実は、各業界のモデルと呼ばれるような企業でも、「将来が見えない」「評価の基準が不明確」ということが、一番の不満の要因になっているのです。

社員の不満を失くすための正しい評価軸とは?

評価の仕方については、いろいろと論争があります。

「そもそも評価制度なんてないほうがクリエイティブな発想が出る」

「行動やプロセスなどの、数字で見えないところを評価すべきだ」

「いやいや、やっぱり実績で評価するのが一番だ」

一体、何が正解なのか。

答えは、どれも正解です。

会社には成長のステップがあります。
評価制度は、自社の成長に合わせて変えていくのが正しいのです。

導入期~成長初期と呼ばれるような、属人性に頼ってでも会社の業績を上げたい場合は、まずは実績で評価をする。
特に会社を引っ張ってくれるようなモデル社員には、給与をたくさん支払うような歩合の仕組みを強くし、「頑張ったらたくさんもらえる」とモチベーションをあげる仕組みにすると、会社としても比較的成長しやすいです。

成長後期~成熟期、いわゆる地域一番店クラスになってくると、今度は属人的だったやり方を、「誰でも」「均一に」成果を挙げられる仕組みが必要です。
そのタイミングでは、成果が出るのは当たり前、という前提の下、行動やプロセスなどの、定性部分の評価の比重を加えていきます。

最終的に、「成果を挙げること」「行動の品質を高くすること」が文化として定着した後は、クリエイティブな制度にすることもOKかもしれません。

大事なのは、会社の成長に合わせて、こまめに評価の基準を見直すことが大事になります。

すべての軸は粗利を基に考える

順序からすると、「実績」→「行動・プロセス」という流れで、評価の基準を作っていくことが大事です。

それでは、実績の評価はどのようにして行うのが正しいでしょうか。

答えは「粗利」で”正しく”評価をすることです。

“正しく”とは、その粗利が、誰によって生み出されたのかをしっかりと把握することです。

たとえば、注文住宅を例に挙げます。
住宅を1棟売ったときに、500万円の粗利が出ました。

これは誰が出した粗利か。

通常では、「営業マンAの実績として500万円」という考えになりがちです。

しかし実際には、1棟の住宅をお客様に提供する過程では、営業マンAだけではなく、図面のチェックを行う設計Bがいて、カラーや仕様を決めるコーディネーターCがいて、現場の工程を組む現場監督Dがいます。
よって、この500万円という粗利は、営業マンAだけの成果というのは、正しい評価とは言えません。

この500万円のうち、250万円は営業の評価、80万円は設計の評価、70万円はコーディネーターの評価、100万円は現場監督の評価、と正しく粗利で評価をすることで、社員一人ひとりの生産性を把握することができ、社員もまた、自分がどれだけ会社に貢献しているかが明確になります。

利益の評価が平等性と自発性を生む

正しい粗利の評価を基準に評価制度を構築すると、社員は自らビジネスを考える社員に生まれ変わります。

・自分の給料を3万円上げるには、あとどれくらい粗利を稼げばいいのか
・粗利を稼ぐためには、低い粗利のものをたくさん売るのか
・それとも数は少なくとも、高単価のものでしっかり粗利をとるのか
・自分や仲間が粗利をたくさん稼ぐために、業務で効率化できるところはないか
・新社員が増えれば、それだけ自分の案件が減るので、社員を増やさなくても業務をこなせる方法はないか

実は、船井総研でも入社時から粗利の評価を取り入れています。
チームや部署ごとの会議も、常に社員自ら粗利ベースで計画を立て、実行していきます。

常日ごろから数字への意識を植えつけておくことで、業績に敏感になり、管理職へ昇格したときも、それほどストレスなく数字の管理を行うことができます。

最近ではクラスター経営という言葉も流行っていますが、一人ひとりが経営者と同じ目線で考え、仕事を自主的に行うことで、社員のやりがいも向上し、会社としても飛躍的に生産性が上がります。

評価制度は会社の成長に合わせ、都度見直しが必要です。
しかし、大事なのは、社員がやりがいを持てる制度にすること。
そして、それはがんじがらめのルールを作ることではなく、自分たちでやりたいようにやらせることが一番満足度が高まります。

行動やプロセスの評価を作ることも大事ですが、まずはきちんと粗利で正しく評価をする仕組みを作ってはいかがでしょうか。