【3分HR講座】【中小・中堅企業保存版】離職懸念人財を見抜く方法

【3分HR講座】【中小・中堅企業保存版】離職懸念人財を見抜く方法

離職懸念人財とは何か?

はじめに、「離職懸念人財とは何か?」をご説明いたします。
離職懸念人財とは、読んで字のごとく「近い将来、離職の可能性がある人財」を指します。
本コラムでは特に、「年齢による自然退職」や「結婚や子供ができることなど、ライフサイクルに伴う離職」といった「ある程度事前にわかる退職」はもちろん「事前に見越すことが難しい突然の退職」を見抜くことに焦点を当てて話を進めたいと思います。

離職の見込みについて

まずはじめに、1つ質問をさせてください。
皆様は自社の離職率を正しく把握しているでしょうか?
そもそも、「離職」は必ず一定数発生します。
離職率を0%にすることはできません。

そのうえで、経営的観点で離職と向き合う場合、自社の離職率を把握することは必須です。
なぜならば、それは事業計画を策定する際に、正しい離職率を見込んだうえで人財計画を策定することにつながるためです。
全社的な離職率はもちろん、部署別・チーム別など、細かく階層分けをしたうえで離職率の把握ができることがベストです。

それができれば、「この部署は離職率が高い」「このリーダーのチームは離職率が低い」というマクロな傾向を掴むことができます。
そうしたマクロな傾向に基づき、離職数を事前に見込んだうえで経営をおこない、事業計画を作成するということが重要です。

最後に、その離職率が目標よりも高い部署やチームに関しては、特に気を配り、優先度を高く改善に取り組むと良いでしょう。
その際、同規模・同業界の離職率を把握したうえで、自社の状況と照らし合わせて正しい離職率の目標設定をすることが望まれます。

(令和2年雇用動向調査結果の概況、厚生労働省 より引用)

上記のグラフが、厚生労働省が発表している離職率の推移です。
業種・業界・会社規模問わずのマクロデータですが、毎年約15%前後の離職率で推移しているので、これを一つ指標にすると良いかと思います。

離職懸念人財の見抜き方

それでは、本題の「離職懸念人財の見抜き方」をお伝えします。
それはズバリ「組織において、階層別で現場の意見や声にしっかり耳を傾ける」ことです。
どういうことかと言うと、例えば一般職、課長級、部長級など階層別に社員の声を聴くということです。

社員と上司や会社の関係が良ければ、結婚などのライフサイクルに伴う離職は本人から話していただけると思います。
しかし、そうでない多くのパターンにおいて、「実は離職を考えている」という本人との1:1の面談で離職について話してくれることは少ないです。

逆に、離職懸念者が一人で抱え込んでいるケースも少なく、例えば「同期の仲の良い社員」「同じ役職で、喜びや辛さを共感している社員」など、誰かしらに相談をしています。

そのため離職に関しては、本人ではなく、その“周囲の人間”の声を聞けるようになっていなければなりません。

「とりあえず1on1の面談を組む」のではなく、普段から小さな愚痴を聞ける、各階層でハブになっている社員を見つけ、その社員から周りの社員の近況を聞ける環境づくりが必要です。

離職懸念人財を作らないために

離職懸念人財を作らないためには、結論「エンゲージメント(社員満足度)を高めること」です。
では、エンゲージメントを高めるとは何をすれば良いのでしょうか?

まずは、エンゲージメントを下記の8つの要素に分解します
1.事業推進力
2.理念・ビジョンへの共感
3.会社・仕事への誇り
4.上司への信頼・社員間の関係
5.自信の将来像
6.評価・報酬
7.働く環境の整備
8.多様性

そうして、この8要素が自社ではどうかを見つめてみてください。
ここでは、単に「良い・悪い」ではなく、「自社ではここが高いのは狙い通りだ、ここは低くても問題ない、ここは高くなければならない」といった視点が必要です。

全て高いことが良いとは限らないということです。
そこは、自社の文化・カルチャーと相談してみてください。

では、簡単に各項目の説明をいたします。

1.事業推進力

これは、「会社の事業力」です。
すなわち、経営が上向きかどうかということです。

コロナ禍ということもあり、離職理由において「会社の業績が不安」という声が徐々に大きくなっています。
そこで、「この会社にいて大丈夫なのだろうか?この会社は元気なのだろうか?」ということを指標の一つに据えております。

2.理念・ビジョンへの共感

続いて、「理念・ビジョンへの共感」です。
これは読んで字のごとくですが、社員が自社の理念・ビジョンへ共感できているかどうかです。
事業推進力と合わせて、どのようなマインド・スタンスで“これだけは絶対にぶれない”という芯をもって働くかことができているかどうか、それを全社員で共有できているかどうか?ということです。

全社員の共通言語として「理念・ビジョン」があり、自分の目標を達成することが、すなわち自身の目標を達成することと同意義になっていると、「この会社で働く意味」になりやすいです。

3.会社・仕事への誇り

続いて、「会社・仕事への誇り」です。
これもそのままの意味ですが、この会社で働くことやこの仕事に誇りを持つことができるかどうかです。

「仕事は好きじゃないけど給料は良いから、、、」「会社に不満はあるけど休みは多いから、、、」という状況では、他にもっと良い条件や待遇の会社になびいてしまいます。

しかし、「この会社で働くこと」「この仕事をすること」に誇りを持っていれば、簡単に他社になびくことはありません。

4.上司への信頼・社員間の関係

続いて、「上司への信頼・社員間の関係」です。
仕事は、「何をするか」「どんな環境で働くのか」も重要ですが、「誰と働くか」も重要です。
憧れ、「この人のようになりたい!」と思える先輩や上司がいるか。
「この人のために頑張りたい」と思える仲間がいるか。
「困ったことがあったらいつでも支えてくれる、支えられる」組織かどうか。
ということです。

このようなモデル社員を育てられるかどうか、組織の文化・カルチャーを醸成できているかどうかに目を向けてみてください。

5.自信の将来像

続いて、「自身の将来像」です。
これは、「この会社で働いていて、自分の将来像を描けるかどうか」もしくは「この会社で働いていて、自分の将来像に近づくことができるかどうか」ということです。

自信の将来像については、元々持っている方もいれば、仕事をしていく中で後天的にイメージしていく方もいらっしゃいます。

そこで重要なのは、「自社で働いた先に何があるか、どうなれるのか?」を常に見せてあげれることが重要です。

そのために、評価制度やキャリアステップというものがあります。
このような人財になれば、このようなポストで、こんな仕事ができるといった流れをイメージしやすい評価制度やキャリアステップを作り、社内に浸透させることで、この点はクリアできます。

6.評価・報酬

続いて、「評価・報酬」です。
仕事の中で得られる喜びは、いわゆる「生きがい」なります。
そのうえで、それが評価され、報酬を得ることは「やりがい」につながります。
そのため、仕事で生きがいを、そして評価でやりがいを与えることで、会社へのエンゲージメントが高くなりますし、その両輪が回ることで、「この会社でなければならない」という状況になります。

なので、まずは「頑張っている社員をキチンと評価してあげる仕組み」を作りましょう。
そのうえで、「とびきり優秀で積極的に様々な仕事をしてくれる方」や、「部下のメンタルのケアなど見えにくいが大事な仕事を自主的におこなってくれている方」まで評価できると、“強い会社”になっていきます。

7.働く環境の整備

続いて、「働く環境の整備」です。
これは、「働く時間」や「職場の清掃」などが整備されており、社員が働きやすい環境が整っているかということです。

どんなに仕事や仲間が好きでも、「毎日3時間4時間残業で休みもない。。。」という状況では、いつか体や心が壊れてしまいます。
毎日頑張ってくれている社員が、突然パタッといなくなってしまうのは、このためです。
残業を少なくするために採用活動を進めたり、今はやりのDXによる時間短縮が重要です。
本質的には、「残業時間が長い」というのは、「=生産性が低い」ということです。
社員の生産性を上げるのは、本人が努力をするのはもちろん、会社側で工夫することも重要です。
そのうえで、どれだけ効率化しても仕事が終わらないということであれば、採用をして人を増やすなどの行動を実施するべきだと思います。

また物理的な意味での「環境」では、トイレの掃除など、毎日通う職場の美化は意外と重要です。
入店した瞬間にお客様の視界に入る範囲だけではなく、バックヤードも整理整頓し、「誰もが気持ちよく働ける環境づくり」がエンゲージメントの向上につながります。

8.多様性

最後に、「多様性」です。
これは、「働き方や社員の多様性を認める」ということです。

昨今では、働き方という側面においては「リモートワーク」。
人そのものに対する側面では「LGBT」などが多様性としてあげられております。

これらの「多様性」はこれから先ももっと世の中に浸透していくことでしょう。
自社でもリモートワークを取りいれ、外国人やLGBTの方の活用を進めることで、多様性を認めることのできる良い文化が醸成され、社員にも良い影響を与えます。

以上8つの要素が、エンゲージメントを考えるにあたって重要な項目です。前述したとおり、これらすべてを高くすることは難しいので、自社の文化や会社の目指す方向性と相談して、どのポイントを優先的に上げていくか考え、離職懸念人財を見抜き、減らす取り組みを実施してみてはいかがでしょうか?