【3分HR講座】内定時から始める即戦力化教育

【3分HR講座】内定時から始める即戦力化教育

はじめに

近年の新卒採用市場では、インターンシップを活用し、「就労意欲の高い」学生に、「早期から」内々定出しを行う企業が増えており、採用活動の早期化・通年化が進んでおります。
自社が欲しい人財を確実に採用するために、今後はより一層早い段階から採用活動を進める必要があります。
それだけでなく、採用の早期化によって内定期間が長くなっている学生も増加しており、内定者研修の必要性が高まっております。
本コラムでは成功事例をもとに、インターンシップと内定者研修を通じて、自社が欲しい人財を確実に採用するために必要な取り組みをご紹介いたします。

新卒採用市場の変遷

インターンシップの開催時期

新卒採用の戦略として、インターンシップ制度を導入して早期に学生とコンタクトを取り、参加者の中から内々定出しを行うという、いわゆる青田買いを目的としたインターンシップが活性化されております。
現在、インターンシップは時期によって傾向が異なりますが、年間を通じてどのタイミングでも実施されております。
学生側からしても、大学3年生から参加することがボリュームゾーンではありますが、毎月インターンシップに参加している学生もおります。
「インターンシップはいつ頃実施すればよいか」という相談を受けることがありますが、いつでも実施できるようにすることが望ましいです。

内々定出しの時期

2022年卒の学生に対する内々定出しの時期について、従業員1000人以上の企業は、2021年1月の段階で内々定を出す人数がピークに達していたという調査がございます。
1月に内々定を出す人数が多いということは、夏休みのインターンシップでかなり多くの母集団形成をして、年明け早々に内々定を出しているといったスケジュールで、実は青田買いをしているということが実態として浮き彫りになっております。

インターンシップ&内定者研修の効果的な活用方法

インターンシップの目的と課題

インターンシップは本来、学生が在学中に、将来のキャリアに関連した就業体験をすることによって、仕事・業界・会社に対する理解を深めていくということが目的です。
就職に対してのミスマッチを未然に防いでいくために、特に欧米社会で活用されてきました。
しかし、日本におけるインターンシップでは、就業体験という観点から見ればレベルが低く、一種の社会問題と化しています。
とはいえ、中小企業においては現場にインターン生を出すことについて、単純にその職場を見せたくない(見せられない)、コンプライアンスやセキュリティの問題があって体験させられない、といったケースが考えられます。
そのため、インターンシップとはまた別の形の研修制度というものを用いて学生のニーズに応えつつ、インターンシップの目的と実態が伴うような内容を用意すべきです。
つまり、会社とのミスマッチを防止できる機能と、内定者が即戦力に近づける研修制度を実装していくことが必要です。

月1の内々定者研修

内々定出しが早まり、内々定・内定者に対して研修を実施する事になった際に、具体的にどのような研修を実施していくべきなのか、という疑問が生じるかと思います。
インターンシップの目的であるミスマッチ防止という観点から考えると、まずはインターンシップから内定出しをする学生を増やしたうえで、内々定を出した学生に対して早期の研修を実施していくということが必要です。

研修では、ミスマッチを解消できるような内容を実施することが求められます。
学生側はインターンシップの参加を通じて、実務や実践に関する情報を求めておりますので、ビジネスモデルや仕事の理解を深めていくための研修をしっかりと行うことが必要です。
特に、成功事例の企業は、会社の考え方・理念・ビジョンについて、可能な限り経営者が登壇して、会社設立の経緯や社名の由来など、会社説明会で伝えるような基本的な内容を経営者が繰り返し説明することを徹底しております。
また、トライアウトとしての役割を果たすため、できれば普段現場の第一線で活躍されている社員にご登壇いただき、業務内容や、内々定・内定者時代に勉強すべきことについて、具体的に説明していただくことが必要です。
以上の内容を月1回の頻度で実施することで、自社を志望し、自社が求める人財を採用しやすくなります。

カッツモデルと研修コンテンツ

とはいえ、具体的にどのようなことを研修で教えれば良いのかと考える方も多いかと思います。
ここでは教育及び研修をしていく上での考え方について、お伝えいたします。

これはアメリカの経済学者であるロバート・カッツ氏が提唱した、カッツモデルと呼ばれるものです。
このカッツモデルは、役職・階層において必要とされる能力の分布割合を考えるためのフレームワークとなっております。
新入社員や内々定者は、このモデルのローワー・マネジメントの階層に該当するかと思います。
この階層の人々に教えるべき内容としては、テクニカルスキル(実務スキル)と、ヒューマンスキル(概念・在り方)という2つが大きな割合を占めております。
内々定者や新入社員に関しては、この2つの割合を大きくして研修を実施することが効果的です。

即戦力化のポイント

ここからは、カッツモデルに照らし合わせた上で、内々定者や新入社員の即戦力化をしていくために、どういった点がポイントになるのかお伝えいたします。

即戦力化をさせていくための必須条件に関しては以下の3点となります。

1)スキルの可視化
・見るべきものを統一する
2)スキルの標準化
・やり方を統一する
3)スキルの共有化
・共通認識を共有する

以下、必須条件3点について、具体的な方策を交えて解説いたします。

スキルの可視化

まずはスキルの可視化についてですが、見えているものが人によってバラバラということが、即戦力化や教育が失敗してしまうポイントになりますので、見るべきものが何なのか整理して、見るべきものを統一するところから始めていく必要があります。
船井総研がスキルの可視化のご支援をする際に重要だと考えているものは、業務マニュアルやスキルシートです。
誰がどれくらいのスキルを持っていて、本来であればどこまで目指していきたいのかという点の整理を通じて、業務の見える化を行います。

スキルの標準化

次にスキルの標準化についてですが、人によってできること・できないことのバラつきがある状態を組織的に放置していては生産性が向上しないため、可能な限り成果が出る手順を標準化していくということが大切です。
船井総研では、スキルの標準化のご支援に際して、マネジメントジャーニーマップ等を活用しております。
これは目標達成のために、いつ、何を学んでいかなければならないのか、当人だけでなく上司・指導者も把握するために作成しております。
そして、どういう人間に、どういうレベルに、いつまでに育てなければいけないのか、上司と部下で共有するための物となっております。

スキルの共有化

そして共有についてですが、組織としての共通認識を持つために、共有する場を設けることが大事です。
この共有の場というのが、我々が一般的に考える研修の場だと思っていただけるとわかりやすいかと思います。
研修は、スキルの可視化と標準化ができたうえで実践することになります。
スキルの可視化と標準化が十分でないと、いくら研修実施やセミナーへの参加を促しても、成果に繋がらないという問題も考えられます。

まとめ

内定者期間から即戦力化するための研修を行うにあたり、以下の点が重要です。

①内々定者に対して、なるべく早い段階から研修を開始する
②社内ノウハウや経験、教えるべき内容の棚卸
③棚卸した内容のコンテンツ化

これらはすぐに完成するものではなく、地道な作業も含めて少しずつ準備を進めるものになるかと思います。
現段階から準備を始め、未来の採用活動と、新人教育に繋げて行きましょう。