【3分HR講座】持続的に組織成長を目指す人材開発の取り組み

【3分HR講座】持続的に組織成長を目指す人材開発の取り組み

 今回のコラムでは、持続的に組織成長を目指す人材開発の取り組みとして、今後の組織成長拡大において、企業の管理職や幹部、次の経営陣をどう育成していくかという点をポイントごとにお伝えします。
 コラムの前半は人材開発の考え方、後半には、他の企業様で取り組んでいる幹部育成の事例を交え、ご紹介致します。

組織成長における人材開発ステップ 

組織成長に合わせた課題の変化

人材と組織の課題は規模に関わらず尽きない中で、重点的な課題が企業成長とともにどう変化するのかという点をまとめたのが以下の表です。

新卒採用で例えると、大企業や超一流企業、誰もが知るようなメガバンクでも取りたいと思った新卒の学生が他者へ内定承諾を決め、辞退されるようなケースは多々あります。

その中で抑えていただきたい重要な点は「今の自社の人と組織の課題は何なのか」を把握することです。

課題は、主にスタートラインとミドル~トップラインの大きく2階層に分けられます。
①スタートライン:これから始めていく段階のこと。これから着手をされる企業がよく持っている課題
②ミドル~トップライン:ある程度取り組んでいる中で、よりブラッシュアップをしていく際によく起きる課題

例えば、新卒採用でスタートラインの課題を持っている企業では、そもそも新卒の学生が入社してくれるのかという不安や、入社までの選考プロセスや選考方法の作り方、説明会やインターンシップで何を準備すればいいのかが分からないといった状態が挙げられます。

中途採用でも、辞めてしまった人の分を補充していく目的で募集をかけることが多いですが、ハローワークやindeedなどで場当たり的な採用になってることも多いです。

一方ミドル~トップラインでは、数年取り組んだ後、新卒採用で欲しい人材のターゲット層が優秀な人材など質の高い人材に変化したり、中途採用では、管理職クラス、大手企業や業界経験者、デジタルに強い専門プロ人材の採用がニーズとして出てきます。

その他にも、人材育成や評価制度、組織開発などにおいても、それぞれ上記の表にある課題が挙げられます。

人材と組織におけるアプローチ


人と組織について考える際には、HR:ヒューマンリソース(人)という人的資本とOrganization:オーガナイゼーション(組織)という切り分けがあります。

右側にある図は、それに対して何をするかというアプローチです。Management:マネージメント(管理)かDevelopment:ディベロップメント(開発)かに分けられ、マネージメントはできる限り内的にまとめていく管理を指します。そのため、標準化や、画一的な行動はやり切らせる管理が必要になります。その一方で、デベロップメントでは、内からどう伸ばしていくかという発想での開発という意味になります。この4つの切り口で自社にとって何が必要なのかということを考えていただければと思います。

人材開発・人材育成で抱える現場の声

人材開発・育成は、タレントマネジメントやタレントデベロップメントと言い、タレントとは、一人一人の個性や才能を意味します。

この人材開発と人材育成での悩みという内容で、実際に大手企業が取ってるアンケート調査を例に挙げると、以下のようなカテゴリーに分けられます。


                  日本の人事部「人事白書2020」をもとに船井総研で作成変

例えば、上位の意識(経営幹部や上司の意識)だと、業務が忙しすぎて、業務を通じて育成していくOJTを行えないことが多く、育成が放置状態になってたり、忙しいことを理由に育成が後手になってるようなケースが多いです。

その他には、人事に関する優先順位が低いことにより、育成ポリシーという部分でキャリアパスが明示できない、育成に関する定義が明確になってないという状況も数多くあります。

幹部の育成が必要な理由

様々な状況下での課題があるなかで、幹部の育成が必要な理由は、「企業戦略の落とし込みやビジネスモデルの加速ができないから」です。

新入社員の基礎研修や業務ノウハウの取得機会だけではなく、企業の戦略をどう落とし込んで、人材育成していくかがポイントになります。

まず、そもそも企業は組織体制を作る必要があり、上から順に以下のような階層を作ります。
①経営者や取締役人
②管理職の中でも上級管理職である部長や中間管理職の課長クラス
③複数店舗を持ってる場合は、店舗の店長や店長代理、副店長
④主任や一般

上記のように階層を明確にすることで、会社全体の規模によってどれぐらいの階層があるかや、どれだけ横の幅が広がっていくか、つまり多角化してるかによって変わります。

その中で、新卒採用をして、育成するために内定者向けの研修などをすることのメリットは、組織に新しい組織風土ができるということです。新卒1年目2年目でも、早く稼げるようにする仕組みを作ることで、人材育成のマネージメントができていきます。一方で、会社の業績を上げるのであれば、幹部の育成を行う必要があります。事業戦略を作り、ビジネスモデルを磨きこんでそれを落とし込むとなると、幹部の手が必要になるため、幹部育成が必須となります。つまり、上の幹部を変えると業績へのインパクトが大きいのです。

組織運営を執行する幹部の育成 

船井総研でも活用している管理職4つのマネジメントスキル

これは、管理職に求められるマネジメントスキルを4つのマトリックスで分けたものです。

下の二つは現場視点で、店長や課長クラスが求められる内容です。

事業寄りの現場視点だと、PDCAマネジメントでは店長の場合、店舗の数値や目標の管理、KPIマネジメントを行わなければなりません。一方、組織や人に関するメンバーマネージメントでは、社員のモチベーション管理など直接部下と接点を持ってる現場寄りのマネジメント層だからこそ求められます。

そして、上の経営視点の範囲の対象になるのが、複数店舗や課長を束ねている部長や役員です。事業では、戦略的思考や発想力、執行力などが必要になり、時代の流れを読む先見性や外部環境の把握、ビジネスプロセスの最適化が必要になります。

人や組織を束ねるという点であれば、ビジョンマネジメントとして、目指す姿の方向を示すことがリーダーとして必要になり、それらをどう社内に落とし込むかというブランディングが必要になってきます。

この上下の視点のギャップを埋めて、上二つのスキルを身につけさせるためにも、幹部の育成が重要になります。 

マネジメント層に求められる能力「カッツ・モデル」 

育成のフレームワークではよく登場する「カッツ・モデル」は、以下のような内容になります。

まず階層が、①トップマネジメント(経営者層)②ミドルマネジメント(管理者層)③ロワーマネージメント(中間管理者層)の3階層に分けられます。

そしてスキルでは、コンセプチュアルスキルは階層が上に行けば行くほど求められ、ヒューマンスキルは対等に、そして現場側であればテクニカルスキルとして実務を管理する・実行させる力が求められるようになります。

 

幹部に必要なスキル:コンセプチュアルスキル 

コンセプチュアルスキルとは、様々な思考力や革新力で新しいものを生み出す力や今後を見据える力といった幅広い部分でのスキルを指し、幹部には必要なスキルかつ、本質的な部分になります。

例えば、大局観というマクロ的に物事を見れるかという観点で、自分の店舗のことしか見れてない状況より、競合やエリアについて分析して、よりマクロに見れる力や洞察力、想像力、思考力、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、デザインシンキングなどがあたります。

しかし、そのトップ層に求められるスキルは漠然としており、どう醸成すれば良いかが分からないというのがよく苦労する部分です。

効果的な幹部育成手法 

経営的視点を養う幹部・管理職育の実践事例

 幹部や次期幹部になる方の課題点として、現場の業務を見たり、指導する力はあるものの、戦略マネジメントやビジョンマネジメント部分の育成の仕方がわからないという方は、以下の5つを参考にしてください。

①知識のみの習得に終始しないようにする
⇒インプットだけでなく、アウトプットを意識する

②学習がどう自社・自分に役立つかをマインドセットする
③身近な事例・ケースをもとに学習を図る
⇒よくあるフレームワークだけだと、自分にどう落とし込んで使うのかが把握できていないことが多いため、身近な事例とかケースを取り扱う必要がある

④常に自社や自分の部署の成長・発展を図る
⇒自分がマネジメントしてる部署の成長発展を常に考える

⑤リカレント教育で学びの楽しさを感じさせる
⇒新しいことを学ぶ機会が減っていく幹部陣は、新しいことを学ぶことに億劫になるのが一般的に多いため、常に刺激を与える意味でも新しいことを学ぶ楽しさが重要になる

 

OJTとOff‐JTを組み合わせて社内育成を体系化する

会社で組み立てていただきたいのは、こちらの社内育成の全体像です。
横に一般・主任・課長・部長の様な形で、階層があります。
縦列は、部署や機能別の組織があります。
これらに対して、それぞれ現状どのようなことをやっているのか、そして今後どういうことが必要なのかを整理する必要があります。

例えば階層ごとに振り分けると、以下のような形になります。
・一般~主任
⇒新人研修:基礎的なスキルや考え方を身に着ける
⇒機能研修:営業の場合、ロープレや商品の理解の知識などでより実践的な内容を学ぶ

・課長
⇒新任管理職研修:現場視点のマネジメントとして、PDCAマネジメントやメンバーマネジメントを学ぶ

 ・部長(今後経営を任せていく、会社全体の業績のインパクトを上げる層)
⇒会社としての成長を考えるための能力を養う

 

船井総研の幹部・管理職育成の実践事例(プログラム内容)

【研修内容】
・大手家具・インテリア業界
⇒家具インテリア業界自体の市場規模が減っているなかで、34年間業績上げている成功企業の取り組み、マーケティング戦略やパートナー連携、資本提携・M&Aの活用について

・大手牛丼チェーン業界
⇒テレビCMや地方での駐車場完備、子連れに向けたデザートメニューの商品戦略などの自社の競合優位性、強豪との差別化、ターゲット戦略、広告・売り場づくりについて

【ワークショップ】
・3C現状分析やクロスSWOT分析によるアウトプットで自社の強み、競合との比較、取るべき戦略の整理を実施

研修の取り組み効果は以下の通りです。
異業種の取り組みを学ぶことで自身の視野を広げる
②マクロ的視点と経営テーマおよび思考フレームを習得する
③経営者(自社)の戦略や取り組みの意図を理解する
④自社や自部署の成長を考える機会を得られる
⑤同じ経営幹部(候補)と意見交換することで一体化する

これら全てに共通して、「学ばせる対象と目的・期待する効果を明確にして臨むこと」が重要になります。

まとめ

幹部・次期幹部育成研修が企業の業績を上げるには必要不可欠です。
自社の組織課題を的確に把握し、階層に合わせた研修や育成制度を作ることで、持続的な組織成長が達成できます。
まずは、どこの育成に手を付けるか検討してみてはいかがでしょうか。