多能工化(技能伝承)の為に作業手順書、段取りは、動画で撮る時代。

多能工化(技能伝承)の為に作業手順書、段取りは、動画で撮る時代。

人材育成・多能工化

ドキュメント管理が進まず、標準ができないと嘆く前に。

最近、人手不足の中小企業も多く、早く人材育成を行い多能工化を進め、自社の生産能力を上げたいと考えている経営者が多いと感じます。その状況の中で、よく社長から「現場の人が文章が書けなくて困っているんだよ。」という声。また、パソコンが使えなくて、一度手書きで書いたものを事務員にパソコンで清書してもらって二度手間になって非効率という声も良く聞きます。
製造現場では、品質を安定させる為に、出来る限り同じ手順で、同じ治具、同じ条件などで、加工・製造しないと品質がばらついてしまいます。組立はもちろん、機械加工の場合でも、工場の温度や機械自体の温度の違いによっても、条件が変わってくるので補正をかけます。補正をかけないと精度が狙ったところに入らずバラツキます。その補正をかける前までは、できるだけ標準の手順と条件で段取りをしないと品質を安定させることは難しいです。

現場では、誰が作業、段取りして、同じ作業、段取りにする為に、作業手順書やQC工程表などが作成されます。
この作業手順書やQC工程表作成が、なかなか進まないのが実情です。確かに初品からある程度、流れる仕事になると、その都度、作業手順書等の作成が必要です。作成したら作成したで、分かりずらい手順書は不良原因になってしまいます。この作業手順や段取りや作用中の動作を簡単に伝えられたら、強い現場を作る為の強力なツールになります。

スマートフォンでも手軽に動画を活用できる時代。手軽に動画でノウハウを残す。

現在、従業員のほとんどの人がスマートフォンを持つ時代です。また若い世代はyoutubeなどの動画から情報収集するという行為も当たり前になってきています。
スマートフォンでなくても、デジカメでも良いのですが、低価格でも高精細の動画を誰でも簡単に撮ることが可能な時代になりました。更に、その動画を見ることも、スマートフォンやタブレット、パソコンで簡単に、現場でも見ることが可能になっています。
今までの作業手順書は、分かりやすく伝える為に、写真を入れたり、イラストをいれたりと工夫をしていました。非常に時間がかかるものでした。それでも伝わらない場合もあり、修正等のフィードバックをかけていました。

これを動画で撮り編集しないで、そのままの動画でも、今までの作業手順書よりも伝わります。更に、熟練工の動画を元に、勉強会などを開催することも容易にできます。今までは、熟練工の方に、勉強会をお願いすると準備をするのが大変、伝えるのが難しいという理由で、勉強会をなかなか開催してくれませんでした。動画があれば、簡単です。動画を元に、動画を止めたり、早送りしたりと、効率的に勉強会を進めることができます。また、解説してくれた音声を動画に挿入したり、テキストとして、動画に入れこむことも可能です。この様に勉強会の題材として活用もできますが、実際の現場にタブレットなどをおくことによって、新人の教育資料として活用することもできます。

動画を作業標準、人材育成で活用する中小企業が増えてきてます!

動画を撮りためて活用しているところはまだ少ないですが、動画の活用を始めだした企業もあります。

私の関係先では、半導体製造装置部品の切削加工・溶接組立を行っている会社が溶接工程を動画で撮り、技能伝承の為に活用しています。半導体製造装置の部品は特殊鋼も多く、溶接にもノウハウが必要です。どのように溶接するか手順がポイントになります。動画を活用しだして、ノウハウの見える化になり、技能伝承がスムーズに進んでいます。

また、自動車部品の量産品を切削加工している会社も、段取りを動画に取り活用しています。量産品の場合、段取りが品質に与える影響が大きいので、段取りの標準化の為に動画を活用しています。

動画を活用しようとすると、一昔前は準備が大変、動画を見る場所も限られる制約もあり、なかなか活用が進んでいませんでした。ただ電子機器の高性能化やスマートフォンの普及で動画撮影がより身近に、簡単になっています。環境に合わせて、どんどん活用できるものは活用していきましょう。

製造現場は、生産管理のマネジメントの仕組み化が進むと、最終的には人材のスキル向上が現場の生産能力、品質やフレキシブル性を上げる上では重要になります。作業やスキルの見える化の為に動画を活用することは、生産現場を強くする一つの手段です。動画をどこで有効活用するかを決める為にも、生産現場の作業やスキルの棚卸、見える化も進めていくことによって、現場が強くなっていきます。ぜひ「現場の一人前」を定義する為にも、中小企業でも職務要件やスキルマップを策定して頂きたい。

将来的には、動画をAIが学習して指導してくれる時代が来る。

将来的には、撮り貯めた動画をAIが学習して音声などで助言をしてくれる時代が来るかもしれません。また、AIによる音声支援に加えて、AR(Augmented Reality : 拡張現実)で作業手順を示してくれるなど、よりテクノロジーを活用して人間が行う作業もより容易な時代に突入してきました。
現在の人手不足時代に、現在はやや難しい作業も先程の動画+AI+ARを活用した作業支援が容易に、コストがかからず出来る時代もそこまで来ています。これから人材育成、多能工化、作業標準を行う上で、伝える手段「動画」の活用も生産活動において重要になるので、ぜひ、実際に自社で活用できるのどうか試行錯誤して頂きたい。