【3分HR講座】人が育つ風土・仕組みづくり
「社員がなかなか成長してくれない」「管理職になりたくない社員」……
会社組織における社員に関する悩みは尽きないのではないのでしょうか?
しかしながら社員の「長期的」かつ「継続的」な成長を実現できないと、会社も成長していきません。会社の成長のため、社員育成や仕組みの整備は必要不可欠です。
本コラムでは、社員が「自ら成長する」「部下を成長させる」と自然と考えるようになるため、企業がどういった仕組みを用意してあげるべきなのかご紹介いたします。是非最後までお読みください。
目次
人が育つ風土・組織づくりの重要性
風土や組織づくりを改めて整理しますと、
組織風土:社内で共通認識されている独自のルールや価値観、考え方
組織づくり:「企業の仕組み」で人を動かしていく仕掛け
と言い換えられます。
社員が『自ら成長する』『部下を成長させる』と自然と考えるような『仕組み』を
企業が用意してあげることで「人が育つ風土・組織づくり」を実現していきましょう。
仕組みづくりの3ステップ
人が育つ風土・仕組みづくりには3つのステップがあります。
step1:成長の指標を見える化する
成長する方向やステップを明確に示してあげる必要があります。
①「会社の想い」を大切にする=定性・スタンス面
②「会社の業績」に貢献する=実務・スキル
③成果を出すプレーヤーとして成長する方向性
④成果を出す人を管理・育成するマネージャーとしての方向性
step2:社員が自ら成長する
成長するチャンスや機会の提供と継続した動機づけを会社がしてあげないと、社員は自ら成長しません。
①成長に対するモチベートを”継続的”に高める必要がある
②自ら学べる機会を提供する
step3:部下を成長させる
部下の成長を本気で考える管理職の育成と、動機づけをしてあげる必要があります。
①部下を成長させる必要性を考える
②本気で部下のことを考える機会を提供する
以上が、人が育つ風土・仕組みづくりへの3つのステップです。次項にて詳しく見ていきましょう。
step1:成長の指標を見える化する
①「会社の想い」を大切にする=定性・スタンス面
ここでの「会社の想い」とは、企業理念やミッション、ビジョンです。それを実現するために、社員一人ひとりが持つべき価値観や取るべき行動を示したのが、行動指針やクレドにあたります。
進め方は、以下の3つです。
・自社の”今”にマッチした企業理念やミッション、ビジョンを形成(に見直し)する
・企業理念やミッション、ビジョンと整合性の取れた行動指針やクレドを作成(に見直し)する
・行動指針やクレドをもとに定性評価を作成する
企業理念やミッション、ビジョンを既に持っている会社様も、見直しが必要かどうか、再度確認しましょう。ここで持つべき視点は「会社にとって」です。一方で、これらを実際に「社員目線」に捉えたものが、行動指針やクレドにあたります。
また行動指針やクレドを作成する際、他社の内容や運用状況はなるべく調べないことをおすすめします。自社の行動指針・クレドを基に評価の内容にしていくことは、想像されている以上に手間も時間もかかるものです。ついつい「参考程度なら……」と考えてしまいますが、引っ張られてしまい、結果として自社に合わない内容になってしまうことは珍しくありません。
まずは自社で、自社に合ったものをひとつひとつ丁寧に考えていただくことが大切です。
②「会社の業績」に貢献する=実務・スキル
「会社の業績」とは売上にあたりますが、その売上に貢献するため、各部署や各職種で上げるべき成果は異なります。実務で行っていることと、評価すべきことをしっかりとすり合わせていく必要があります。
またここでは、成長=「会社の想い」を大切にして「会社の業績」に貢献する社員になる、と定義します。
進め方は、以下の3つです。
・各部署や各職種を整理する
・上げるべき成果を整理する
・その成果に直結する行動を整理する
実務で実際に行っていることを全て入れようとすると、評価項目(=指標)が多くなり過ぎてしまい、社員は成長の道を迷ってしまいます。成長していってもらう、という視点・指標で数を絞った方が良いでしょう。絞る時の優先度の付け方は、成果に直結する順番で取捨選択をしていきます。目安としては10項目程度です。
また同じ部署・職種であっても、業務内容や求められるスキルが異なる場合があります。より実状に合わせてあげるためにも、同じ職種でもあっても、業務を分けられるのであれば細分化し、評価項目や方向性を明確に整理してあげる方が良いです。
③成果を出すプレーヤーとして成長する方向性
ここ数年、管理職でない方向でキャリアを上げていきたい、という人が増えています。そのため会社としても「管理職になろう」「管理職になれたら偉い」というだけでない別の道・別の成長の軸も用意する必要があります。
それがここでいう成果を出すプレーヤーです。自分自身が成果を出して業績に貢献するプレーヤーとして、成長していくキャリアを設計していきます。
進め方は、以下の3つです。
・プレーヤーとして成長してもらいたい職種を整理
・入社からどこまでプレーヤーとしてのキャリアを設定するかを職種別に整理する
・各職種別に基準を決定する
会社様によっては、今の会社の規模・従業員数・売上では必要ない、そっちの道に進んで欲しいわけではない、という現状や職種もあるかと思います。その場合は、今の段階ではその道は作らない、その道は示さないという判断も大事になってきます。逆に、ここで選ばなかった職種は、
「どの程度の会社の規模になったら必要になるのか」
「どれぐらいの従業員数になったら必要になるのか」
をしっかりと整理しておく必要はあります。
また、入社した段階はレベル1だとすると、レベル10までの基準が作れる職種もあれば、自社の現状、業態、業界、職種を考えるとレベル5までが限界、といった状況が出てきます。そういった縦の軸をどれぐらい用意するのかも、職種別に整理していきましょう。必ずしも全職種を同じレベルまで設定する必要はありません。
同じように、基準を設定をする際、どのレベルも同じ項目がないといけないか、という質問をよくいただきます。単刀直入に申しますと、答えはNOです。レベルが高い人に求めたい成果や能力、まだまだレベルが低い人たちに求めたい成果やスキルの種類は異なります。むしろ大事なことは、求めたい成果の種類、スキルの種類をちゃんと整理して分けて、明確にしてあげることです。
④成果を出す人を管理・育成するマネージャーとしての方向性
社員の管理・育成といった業績に間接的に貢献するマネージャーとして、成長していくキャリアを設計していきます。
進め方は、以下の3つです。
・役職の断層を決定する
・各役職別にどのような区分で基準を設定するかを検討する
・区分別にどのような行動、成果で評価するのか基準を決定する
一般社員としての入社後、リーダー(主任)、課長・店長、部長などといった縦の役職を、どの程度用意するか、整理していきます。その際のポイントは、実際に求めたい能力、求めたい責務が異なる場合に応じ、階層を分けていくことです。現状としてリーダー >> 係長 >> 課長 >> 部長があるため、この4つでいいかな、の判断は間違いです。能力や責務が異なるのであれば、リーダーの中でも細分化しても構いません。
管理職の基準や成長の指標を定める際、ヒアリングする中で管理職に求めたいスキルや要素として、「定性面」「管理能力」「育成」「情報収集・自己学習」「採用活動の重要性・大変さを理解している」といった5項目が多く上がります。採用は近年出てきた話であり、管理職に採用活動への協力を希望する会社様では、管理職に求めるスキル・昇格の基準に値する成長の軸の中に採用活動の話を含めている場合があります。内容としては、選考など採用活動に参加したことがある、ことはもちろん、インターンシップや内定者アルバイトに参加する学生から、目指したい先輩として名前が挙がる、などの話でも構いません。是非参考にしてください。
step2:社員が自ら成長する
ここまで成長や評価における指標の話をお伝えしてきました。ここからは自ら成長する・部下を成長させることについて、解説していきます。
①成長に対するモチベートを”継続的”に高める
先にも記載しております通り、モチベートは一時的に高いだけでは意味がなく、継続的に高めていかなければなりません。そのためにも、継続的に次のキャリア・成長を考えられるよう、しっかりと制度を運用していく必要があります。
進め方は、以下の2つです。
・プレーヤーやマネージャー基準の進捗状況を見える化して、最低でも年2回、理想は月1合いで本人と上司で面談を実施する
・定性や実務評価に対しても目標を設定し、日々の業務の中で進捗を確認する
まず指標があることにより、会社への信用や信頼が獲得できますが、その後何の音沙汰もなければモチベートは徐々に下がっていきます。指標がある”だけ”では意味がありません。
また評価面談シートなどを用い、フィードバックの内容や目標設定の見える化をしていきましょう
②自ら学べる機会を提供する
社員が自分の目標達成に向け、自ら学べる機会・ツールを用意してあげましょう。
進め方は、以下の3つです。
・冊子や動画のマニュアルを用意して、いつでも学べる環境を作る
・研修や勉強会、テスト、コンテストなどを計画して実行する
・育成ツールの情報や内容は最低でも1年に1回の頻度で見直しを実施して、最新の状態を維持する
自分で学びなさい、やりなさい、と言っても、どうやって調べたら、何を見たらいいのかもわからない段階では難しいです。そのため自身で初期学習ができるよう整えてあげる必要があります。近年はYouTubeなど動画慣れしている学生・社員が多いため、動画コンテンツを用意する会社様も多く、社員の方からも好評です。長くても5分程度のものを作成しましょう。
またその際、自身の学びをチェックできるような機会であったり、誰かと一緒に学べる場を設けてあげると良いです。
マニュアルや研修が既にある会社様は、そのマニュアルや研修内容の最終更新日を確認してください。社員が自ら学べるツールは、日々の業務内容や、その中で必要な能力といった、実務寄りなことが多いです。そうしますと、作成から1年以上経過している場合は、実際と合わない部分やマニュアルに含まれていない項目が出てきます。最低でも年に一度、期首期末などのタイミングに合わせ、見直しを実施しましょう。
step3:部下を成長させる
最後になります。ここでは、部下を成長させる必要性を考えさせ、本気で部下のことを間上げる機会の提供について、ご説明していきます。
①部下を成長させる必要性を考えさせる
管理職にも依頼のキャリアを示し「自分もキャリアを上げることができる」「キャリアを上げるためには部下に今の自分のポジションを引き継ぐ必要がある」と感じてもらう必要があります。
進め方は、以下の2つです。
・可能な限り正社員で就ける最上位役職まで基準を明確にする
・昇格基準に教育や育成、指導について要件を含める
(場合によっては、部下を昇格させたことがあるかどうかを要件に盛り込む)
よくある課題として、課長に上がるまでは基準が設けられているにも関わらず、部長に上がるタイミングでは、役員との面談によるなど、ざっくりとした基準になっている会社さんが多いです。そうしますと、自身のキャリアアップはチャンス次第であり、それがいつになるのかわからず、社員は長く、上を目指して働いてはくれません。特に課長職以上、店舗がある業界であれば店長職以上は、責務・スキルは明確に決める必要があります。
②本気で部下のことを考える機会を提供する
昇格基準を設定するだけでなく、本人と上司が経営陣の前でプレゼンする機会(審査会)を設けることで、本気で部下のことを考える機会につながります。
進め方は、以下の3つです。
・審査会の所要時間や流れを決定する
・審査会でプレゼンしてもらう内容や事前提出資料を決定する
・当日の審査員と審査基準を決定する
先程お伝えしました、役職の昇格の基準や指標について、決まってはいないものの、新しくリーダーになる人・店長になる人の話を社内でしている会社様には、是非この審査会を実施していただきたいです。改めて部下(昇格する本人)が、未来について考える良い機会になります。
プレゼンをしてもらうため、その場でしっかりと伝えてもらうことや、そのための準備が必要になるため、考える必要性を与える、の方がニュアンスとして近いかもしれません。そういった機会や場を設け、部下も上司も上を目指し、互いに切磋琢磨していける良い組織をつくっていきましょう。
さいごに
改めて、本コラムのポイントをお伝えすると、以下の通りになります。
・成長の指標を用意する
↓
・社員が自ら成長できる機会づくりにより、モチベートを高めていく
・自分自身の成長と部下の成長の両立
本コラムでは社員が自ら成長できる機会づくり→部下の成長の順番で書かせていただきましたが、どちらを優先的に進めるべきかは会社様の状況により異なります。管理職が成長しないと部下も成長しにくいため、管理職を先に進める会社様が多いです。その上で、自社に足りていないなと思う部分を整理し、何から進めていくかを決めた上で実行していきましょう。